造血幹細胞治療のイノベーション

高まる造血幹細胞移植ニーズ

世界では白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などの血液がん、遺伝子疾患である再生不良性貧血などの難治性血液疾患など、血液の病気で苦しむ患者さんは年々増加傾向にあります。また、白血病は世界で様々な治療法の開発が行われているものの、依然として他のガンと比べても治療成績は著しく低く、半数以上の患者さんが数年以内に命を落とす重篤な疾患です*1。既存の抗がん剤治療法や、新しい治療法でも治癒が不完全である場合、再発した場合、根治を目指すためには造血幹細胞移植*2(いわゆる骨髄移植)を行う必要があります。

*1: 国立がん研究センター がん対策情報センター、白血病 5年生存率(男性:43.4%、女性:44.9%、2009-2011年診断例)
*2: 通常の治療法で根治困難な重篤な血液疾患の場合、大量の抗がん剤や放射線を使って、血液中の悪性細胞を破壊します。この時、正常な血液細胞も破壊されるので、ドナーから供給してもらった正常な造血幹細胞(骨髄や末梢血、さい帯血)を移植し、赤血球、白血球、血小板を再び造れるように骨髄機能を再建する治療方法

造血幹細胞移植に求められるイノベーション

造血幹細胞は、患者さん自身の骨髄・末梢血に加えて、ドナーの骨髄、末梢血、出産時のさい帯血から入手することが可能です。しかし、現在の医療システムでは、まだ全ての患者さんが必ずしも最適かつ十分な量の造血幹細胞を迅速に入手できる状況ではありません。

赤血球にA型、B型、O型、AB型というABO式の血液型があるのと同様に、白血球にもヒト白血球抗原(HLA : Human Leucocyte Antigen)というHLA型が存在しています。HLAが一致しない造血幹細胞移植は、拒絶反応や重症の移植片対宿主効果(GVHD)の副作用が起きます。こうした命に関わりかねない副作用を起こさないためにも、HLAを一致させる必要がありますが、HLAは兄弟姉妹間で4分の1の確率、非血縁者間(他人)となると数百万~数万分の一という極めて低い確率となります。

患者さんのHLAと一致するドナーを探すことが必要かつ大変であることに加え、見つかったとしてもドナーの年齢や健康上の理由で骨髄提供できなかったり、ドナーになんらかの負担(時間的負担(3泊4日の入院・手術)、全身麻酔によるアレルギーリスク、約1.0リットルの貯血など)を強いることから、コーディネートに大変時間がかかります*3。また、少子高齢化によるドナーの慢性的不足の懸念など指摘されています。一方、さい帯血はそもそも出産時の廃棄物のため、供給上の問題が少なく、また慢性GVHDが起きづらいというメリットから、造血幹細胞移植の細胞ソースとして注目されているものの、さい帯からとれる量が極めて少なく、移植の生着率が骨髄より低いというデメリットもあります。

このように、造血幹細胞移植治療では、供給に関わる時間的問題に加え、細胞自体の量的・質的課題の解決が求められていると言えます。

*3 :国立がん研究センター がん情報サービスセンター、初回マッチング率は高いが、健康状態・ドナー都合などで最終マッチング率は低い(48%、5-6カ月待機)